マナーエッセイ

若者語に負けぬ…難解な『オトナ語』

2009年4月1日

先日、地下鉄に乗っていたとき、隣の若者(大学生風)二人組の会話が聞こえてきた。
「あいつ、マジへこんでるから今日はカラアゲでいこうぜ!」
「お~、いいねぇ。でもオレ、今、結構ヤベぇ。ユキチセンパイとか崩れたら、はえ~し…。」
…○×?☆!▲…。皆さんは、この会話の意味がおわかりになるだろうか?私は、あまりの不可解さに「この子たち、いったいどこの国の人?」とばかり、彼らを凝視してしまった。もちろん二人のほうも怪訝そうな表情を返してきたが…。

 

おそらく若者世代特有の流行言葉だ。聞くところによると、”カラアゲ”とは、「カラ元気でアゲアゲ」すなわち「ぱぁ~っと元気に気分をあげて」という意味らしい。そして、”ユキチセンパイ”…、驚くなかれ!何と「1万円札」を指すのだ。どうも彼らにとって福澤諭吉は部活レベルの身近な先輩らしい。
よって推測するに、先ほどの二人の会話は概ねこんな感じか…。
「彼(友人)が、とても元気がないので今日は(どこかの店で)パァ~っと明るく盛り上げようか!」「そうだな、でもボクは今、少し金欠なんだ。先日も買い物で1万円出してお釣りが千円単位になった途端、小さな買い物は気軽にしちゃうもんだから、あっという間にサイフの中が寂しくなってさぁ…」。

 

世の中は不況の真っ只中…。しかし、今年も多くの若者が社会人としてのスタートを切ることになる。ベテラン社員たちは、少なからずとも”今どき”の言動・行動に困惑することが出てくるだろう。
…が、しかし!若者たちも戸惑っていることを皆さんはご存じだろうか。
実は、職場でフツーに使われている言葉が、彼らにとっては意味不明らしいのだ。

 

-某企業の営業部。ヤル気満々の新人A君が、ある企画提案をしたところ、上司の返事は「う~ん、基本オッケーなんだけどねぇ。なんかちょっと見えてこないなぁ」。A君は、えっ?見えない?何が?…で、OK?ダメ?どっち?…と、上司の言葉の意図が全く理解できなかったという。B子さんも「先日の○○、ざっくり整理しといて!」と言われたが、きちんとすることが整理でしょ?何でざっくり?…と、思ったそうだ。

 

コピーライター糸井重里氏によると、社会には『オトナ語』なるものがあって、日常よく使われてはいるが、どこか変で、それが免疫のない若者たちを困らせているという。
いくつか紹介してみよう。

 

①【ちょっと3分いい?】-絶対3分じゃ済まない。「2分で終わらせるから待ってて」も当て
にならないし、「3秒で終わります」は最悪。
②【目を通す】-書類などをザッと読むことだが、ホントにそうしたら「目を通しておけと言っ
ただろっ!」と叱られるので注意。社会では熟読を意味する。
③【相談】-「ご相談があるのですが」と言われたら90%何かをお願いされる。さらに上司
がわざわざ近寄ってきて「ちょっと相談」と短く言ったときは100%命令。
④【~と思われます】-「分かりにくいと思います」でなく、「分かりにくいと思われます」。オ
トナは個人的主張を不特定多数の声にすり替えるのが得意。これで何となく説得力が増すし、日報等の報告書提出にも役立つ。「たぶん、ボクだけじゃないよ~」って。
⑤【それとなく】-「それとなく聞いてみて」、「それとなく投げてみますよ」。このオトナの隠
密行動に若者は苦しむ。
⑥【ちょっと】-「ノー」と言わない代わりに「そこまでするのはちょっと…」、「さすがに全部は
ちょっと…」、「私、お酒はちょっと…」、「多すぎるのもちょっと…」と、だから何?
⑦そういうことで-「じゃぁ、まぁ、そういうことで。」これは”今日はこれで終わりです”という
意味。
番外編:【今現在・一番ベスト】-「今は現在でしょ!」、そして「一番だからベストに決まって
るでしょ!」と、若者たちの叫び声が聞こえてきそう…

 

以上、これらはオトナ語のほんの一部なのだが、個々に思い当たる節があるのではないだろうか?

 

さぁ、ベテランの皆さん、フレッシャーズには当面、分かりやすい言葉で接してあげてくださいね!

 

おわり