マナーエッセイ

相手への配慮。叱るときも同じ…

2011年11月1日

数日前に乗ったバスの中…。ある停留所から、上司&部下とおぼしきサラリーマン風の二人の男性が乗車して、私の前席に座った。
しばらく互いに無言状態が続き、やがて上司のほうが口を開き始めたのだが、何だか様子がおかしい。「お前、少しは頭使えよぉ、全く…、信じられん…、おいっ、聞いてんのか?!」。それに対して部下は小さく「はい」と返事をするだけ。さらに上司は追い討ちをかけるように「反省してんのかっ?!オレはお前のために言ってやってんだぞっ!」と、まぁこんな具合だ。
「叱る」という行為は、職場におけるコミュニケーションの中でも「断る」、「頼む」と並んで最も難しいものの一つと言われているが、私はこのとき、威圧的な上司に対して一言も発することができず、うつむいていた部下の男性に、「もう少し、大人の叱られ方をされたいよね」と、軽い同情の気持ちをもった。
さて、”叱り方”の観点から述べると、よく「キミのために叱っている」という言い方をする上司がいるが、これは一種の言い訳(エクスキューズ)に過ぎないらしい。なぜか?それは叱られてタメになったかどうかは、叱られた本人が判断することだからなのだそう…。なるほどぉ~、確かに「おまえのタメだ」と言われて、「大きなお世話だ」と反発したくなることがあるのは、そのせいか…。

 

では、部下にやる気を出させて効果を上げる叱り方とはいかなるものなのか…。 以前、人材コンサルタントの方から教えてもらったのだが、「叱るときは”環境”から叱り、褒めるときは”能力”から褒める」のが効果的だそうだ。
仕事の成果は三つの要素で決まり、一つ目は知識やスキルなどの「能力」。二つ目は、考えたことを実行に移す「行動」。三つ目が市場環境や労働環境などの「環境」とのこと。これらの要素は人間に例えると、頭(能力)、体(行動)、足元(環境)の順に並んでいて、ちゃんと意味があるのだとか…。部下を叱るときは下から、褒めるときは上から褒めると、相手に伝わりやすいのだという…。

 

例えば営業成績の悪い部下が「もっと頭を使え!」と怒鳴られてもプライドが傷つき、心を閉ざすだけ。まずは「他部署との連携が上手くいってないのでは」(環境)というように外部環境の原因を指摘したうえで、それでも効果がなければ「訪問先のエリアを広げろ」(行動)、「営業話術を磨け」(能力)と叱っていくそうだ。そして、能力の中でも、頭について言及するのは最後の最後にすべきとのこと。

 

逆に、褒めるときは能力から褒めるほうが効果的だという。そりゃ、そうよね…。人間だれでも「環境がよかったから成果が出た」と言われるよりも、「キミの営業手腕はさすがだ」と褒められるほうが嬉しいもの…。なるほどねぇ~、ホントに納得! さらに、昨今では”叱られ下手”の部下が増えてきており、叱った上司を嫌いになる傾向も強いという。したがって、最初に部下の心を開かせたうえで叱るという工夫が必要らしく、そのために「褒める(感謝する・ねぎらう)」→「叱る」→「褒める(期待する・激励する)」というサンドイッチ方式も効果的な方法として取り上げられることが多くなった。

 

“叱る”って、なかなか難しいことだが、このようにせっかく効果的手法を知っていても、上司から無意識に出てしまう一言に部下が傷つき、全てが台無しになってしまうこともあるから大変だ。代表例をあげてみよう。
(1)「お前、使えないなぁ」(※人格を全否定されているようでグサッとくる)、
(2)「俺がお前の年の頃には…」「昔は…、なのにお前は…」(※時代と環境が変わっているのに昔のことを言われても困る)、
(3)「もっと考えて仕事をしろっ」(※自分は新人で考えられるだけの経験を積んでないんだからしょうがないだろ…、教えてもくれないでよく言うよ…)、
(4)「俺がどんな意図でお前にこの作業をやらせたか分かるか?」(※そんなの知るかっ!)
と以上の四つだ。

 

要するに…、叱るときも「相手の立場に立って」というマナーの基本が大切ということなのね!

 

おわり