マナーエッセイ

猛暑、酷暑、炎暑・・・、ネクタイはもう限界?

2008年9月1日

本日も出張…。今、大分に向かうJRの中でこの原稿を書いている。さすがに7月も下旬に差し掛かろうかというだけあって、今日も暑い1日になりそうだ。
そういえば、今朝のニュースでお天気お姉さんが、「福岡地方の最高気温は34℃です」と、エラく過酷なことを涼しげな笑顔で言ってたなぁ…。
ここ数年、メディアでもよく取り沙汰されているが、ホントに夏の暑さは尋常じゃない!『地球温暖化』が容赦なく進んでいるのだろう。素人の私たちにも明らかにわかるのが何とも残念でならない…。

 

さて、この時期いえば『クール・ビズ』。 温暖化防止のため、私たち一人ひとりができることを実践し、国も様々な施策を打ち出している中、夏季のクール・ビズは最も周知されているものの一つ。
男性がワイシャツのボタンを上まで留めてネクタイを締めるのと、首元をオープンにするのとでは体感温度が3℃も違う。ネクタイ族の男性陣のために冷房をガンガンかける一方で、オフィス内の女性陣はガタガタ震えてひざ掛けが手放せないという矛盾が生じているぐらいだ。クール・ビズは私も大賛成!どんどん広げていくべきだと思う。
しかしっ!!この場に及んで礼儀正しい日本人魂がちょっと邪魔をしているようだ。言動・行動、身なり全てにおいて「きちんとする」ことを美徳とし、戦後の国際社会を生き抜いてきたビジネスマンたちの伝統は、なかなか崩れるものでもないらしい…。
多面的に見てクール・ビズが好ましいと思うのは皆、同じだろう。…が、現実となると話は別で…。(今も、臨席にいたオジさまが、下車間際にネクタイをきっちり締めて降りていった。…涼しい車内から暑い外に出るときに、わざわざだ…)。
実際、「クール・ビズは、夕方オフィスに戻ってきてからだね…。さすがに取引先にはノーネクタイじゃ行けないよぉ」という営業マンが多いことも事実だろう。 ビジネスシーンにおいて、割と融通の利く格好が許されている女性の立場からすると、気の毒なことこの上ない。  「あのオジさま、これからお客様のところに行くのかなぁ、暑いよねぇ」と勝手に心配までしてしまった。

 

さて、今年は洞爺湖サミットのテーマでもあったせいか、各地でいろいろな催し物が行われ、私も先日、温暖化についての提言シンポジウムに参加した。小池百合子元環境大臣が基調講演をなさるということで、それがお目当てでもあったのだが…。
クール・ビズの名付け親でもある小池氏曰く、「シャツにネクタイという形はヨーロッパから入ってきたもの…。この時期、高温多湿の日本に合うはずがないでしょ。21世紀、もうそろそろ服装でも欧米に倣うのではなく、   日本らしさ、アジアらしさを出してもいいんじゃないかしら」…と。
…心に染み入った瞬間だった。 私も日頃から、「時代とともに”マナーの形”は変わることがある」と考える一人だからだ。
みんなが本気で温暖化対策に向かうべき今、ビジネスマンの皆さんも『日本国内』で『日本人同士』の仕事の場合は、『日本の風土』に合った『日本らしさ』を体現するマナーを確立してもいいのではないか…。

 

そんなことを考えていて、ふと思い出した。 先日、立て続けに二人の来客があったときのことだ。  その日は”猛暑”という言葉がぴったりで、特に午後のキツさは言葉にできぬほど…。駅から徒歩で6~7分の本校に、お二人とも歩いてこられた。
Aさん、濃紺のネクタイが素敵なビジネススーツ。だが、噴き出した汗がいつまでも引かず、ハンカチで何度も額を拭う姿がとても気の毒で、私も思わず「お暑い中をわざわざお越しいただいて申し訳ありません」を連発。
次にいらっしゃったBさんは、襟の立ち具合がカッコいいブルーのシャツに、軽やかなサマーウールのジャケットという服装だった。 「暑そう…」という感じを受けることもなく 自然に仕事の話を進めることができた。
ビジネスマナーの常識からすると、ネクタイ姿のAさんのほうが「きちんと」感があって、相手に好印象を与える……はず。  しかし、一概にはそう言えないことを、この”酷暑”が教えてくれたような気がした。

 

「自然現象との共存の中で、マナーをどのように考え、体現していくか…」  こういう面においても、今は時代の過渡期なのかもしれないなぁ…。

 

おわり