マナーエッセイ

ザ・ホウレンソウ

2007年2月1日

パフォーマンス学で高名な日本大学の佐藤綾子先生が、樋口廣太郎氏(当時アサヒビール会長)と会食をしたときのこと。突然、樋口会長から、「ちょっと佐藤さん、あなたはいま食事の間に同じことを3回言いましたよ。そのクセを直さなかったらいい仕事はできませんよ!」とキツイお言葉。「部下であっても他人であってもどんな相手だろうが、僕はしばらくの間に同じことを3度も聞かされるほど暇ではないですよ。」とのことらしい。

 

楽天の三木谷社長も「とにかくスピード!」と言い切るように、ビジネスマンにとって『速さ』や『効率』は重要なキーワードだ。

 

したがって職場での『ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)』がどんなに大切かは言わずもがな…だろう。だが、これがなかなか難しく、スムーズな仕事運びができないことがしばしばだ…。

 

ある会社のA課長、新入社員のB君に「この倉庫をきれいに片付けるように」と指示を出したのだが、B君はいっこうに報告してこない。「仕事の基本だぞっ!」と一喝してもきょとんとした顔をしている。彼にしてみれば、整理整頓して掃除をすればOKなので、忙しい上司のことを考え、わざわざ「きれいになりました」だけの報告は必要ないかと思ったわけだ…。

 

通常『仕事』とは、『WORK=作業・労働』、『TASK=職務、務め』という二つがあり、WORKは細切れの仕事や比較的単純な作業、TASKはいつくかのWORKから構成されているものと解釈されている。

 

部下から報告がないと不満を感じる場合、それは一方的な部下だけのせいではなく、WORKとしての指示出しになっているケースも結構あるのかもしれない。もしA課長が、倉庫の次の用途を説明し、片付き次第、備品を搬入する予定であることを話しておけば、B君はきっと報告してきただろう。

 

また、報告をする部下側も、忙しい上司に対して(1)タイミングよく、(2)結果から先に必要最小限のことを、(3)ポイントをついた形で要領よく報告するよう心がけなければならない。さらに上司が部下から相談・報告を持ち掛けられ、一番困るのは「どうしましょうか」というだけで部下本人が代案を持たない場合。経験豊かな上司でも、いきなり丸投げされてとっさに良策が見つかるわけではない。部下が自分なりの方策を考えてから臨むことで、上司としてはその良否を判断すればよく、物事がスピーディに進んでいく仕組みが一つ出来あがるわけだ。

 

こうしてみると、仕事の『スピード化』や『効率化』を図るうえで、ホウ・レン・ソウにおいては、指示を出す側も報告・相談する側も共通重要項目は「相手への配慮」!

 

やはりマナーなくして仕事は上手くいかないようだ…。

 

おわり